ドラマ『アリバイ崩し承ります』第4話をネタバレしつつ感想を。
Contents
キャスト
登場人物 | 役どころ |
美谷 時乃 (みたに ときの) |
美谷時計店の店主。時計修理の他にも、アリバイ崩しを得意とする。20歳 |
察時 美幸 (さじ よしゆき) |
那野県警察本部 刑事部 管理官。霞が関から那野県へ着任。45歳。今回は山梨へ家族旅行……? |
海渡 雄馬 (とかい ゆうま) |
那野県警察本部 刑事部 捜査一課 刑事。職場の皆さんからは「ジュニア」と呼ばれている。25歳 |
稲葉 茂男 | ペンションのある山梨県警の刑事。 |
原口 龍平 | ペンションの客。中学生。 |
上寺 千恵 | ペンションの客。会社員。 |
野本 和彦 | ペンションの客。会社員。 |
黒岩 賢一 | ペンションの客。会社員。 |
里見良介 | ペンション時計荘のオーナー。 |
里見万希子 | ペンション時計荘のオーナーの妻。 |
今回は、”出張アリバイ崩し”だったため那野県警の皆さんがほとんど出ませんでした。
第4話『山荘のアリバイ』
事件発生
靴のアップから始まり、血のついたダンベル。どうやら、薄暗い場所で仰向けに人が倒れているようです。
そこへ扉が開き察時さんが男性と一緒に入ってきます。男性を制止し、倒れている男性に「黒岩さん」と呼びながら近づく察時さん。
大声でもう一度名前を呼ぶも、反応なし。倒れている男性の首元に手を伸ばし脈を確認する察時さん。「死んでる」。
美谷時計店
「ねぇ、ど〜〜〜してもダメ?」
サングラスに黒い帽子、真っ赤なシャツを着た渡海(以後、ジュニアと書かせていただきます)が時乃に声をかけます。ジュニアは那野県警・捜査一課の刑事。お父さんは国会議員で、職場では皆んながちやほやしてくれますが、時乃はジュニアを特別扱いはしていません。
「せっかくの休みなんだよ、ドライブぐらい付き合ってくれてもいいじゃん」とめっちゃ早口なジュニア。
「ごめんなさい、お店休むわけにはいかないんで」とケンモホロロの時乃。うなだれるジュニア。
「そういえば管理官は?まだ寝てんの?」と自分の腕時計を見るジュニア。いやいやいや、時計屋さんだから、あっちこっちに時計置いてあるのに自分の見ちゃうのね。と思ったけれど、お店の壁を飾る時計はどれもこれも時間がバラバラ!
「昨日から、奥さんと娘さんと一緒に旅行に出掛けてます」
「それでそわそわしてたんだねぇ。まぁ事件が起きたらなぁ旅行なんて行けないもんな」
「察時さん、すごく楽しみにしてたんですよ」
「意外と家族を大事にするんだねぇ、あのおっさん」
察時さんを、おっさん呼ばわりするジュニア。
そこへ黒電話が鳴り始め、ハッとした表情で電話を見つめる時乃。
張り切って「美谷時計店です!」と電話に出ると「助けてくれ」と。
「へ?」
「旅先で殺人事件が起きたんだ。一刻も早く解決したい、すぐにこっちに来てくれ。アリバイ崩しを頼みたいんだ」
噂の主、察時さんからの電話でした。
「分かりました!場所はどちらですか?」
「山梨にある時計荘というペンションだ」
「山梨ですか〜、結構時間かかっちゃいますよ?」
「くそー、チッ」と舌打ちしつつ「どうしたものか」と困る察時さん。
そこへ、「時乃?」すっかり置いてきぼりにされてるジュニアが声を掛けます。「どうかした?」
ジュニアには言えないことだしなぁ、みたいな顔をしつつ「あ!」
「分かりました!すぐに向かいます!」満面の笑みを浮かべる電話を切る時乃。
ガッツポーズをしつつ、「出張!アリバイ崩し!!」と心のなかで叫ぶのです。
ペンション時計荘
ジュニアの赤い車で山梨のペンションへ到着した時乃とジュニア。
まったく理由を聞かされていないようで、「いいとこじゃん」とペンションに満足げなジュニア。
「もしかしたら、泊まりになるかもしれません♪」という時乃に、「と、泊まり〜。まぁ俺はいいけど別に」とテンション上がるジュニア。
「あ!察時さーん!」と手をふり駆け出す時乃。
「察時さん??……え?」
「悪いな、無理言って」とペンションの外に出てきている察時さん。
「雄馬さんに送っていただきました♪」
「なんで管理官が?時乃、これどういうこと??」まったく状況をつかめないジュニア。
「まぁいいや、中に入ってくれ」
まぁ、いいやって!!ジュニアもいるけど、まぁいいや、ってことですか、察時さん!!
「部外者は入れるな」と部下に言いつつ、ペンションから出てきた男性が「察時さん、彼らは?」
まったく察時さんたちを見ないで話す男性、すでに感じ悪い。
「彼は那野県警・捜査一課の渡海です。こちらは(と、時乃を見つつ)まぁ……ちょっとした知り合いの時計屋です」
察時さん、説明が雑!というか、まぁ、そう言うしかないですよね。まさか、アリバイ崩し頼んでるんですとは言えないし。
「管轄の稲葉刑事だ」
「困るんですよねぇ。同業者といえ事件と関わりない方を立ち入らせたくない」と、未だジュニアたちの方を見ないで話す稲葉。
「心配で来てしまったようで。部屋の中に」と時乃とジュニアをペンションへ入れる察時さん。
「どうなってるんだぁ?勘違いした、俺が馬鹿だったのかぁ?」とぼやきつつ、ペンションへ入るジュニア。基本的にジュニアは勘違いしっぱなしだものね。うん。
ペンション内のダイニングルーム
時乃の方を恨めしそうな目でみるジュニアと、目を合わせない時乃。
広々としたダイニングルームには、ぽつんと1人少年が座っています。その子の方へ歩くように察時さんがジュニアに促します。
「龍平くん、彼もね刑事なんだ」
原口龍平くん、ジュニアを見て「かっこいい!」
時乃の言葉を勘違いしたことに拗ねてたジュニアも、この一言で機嫌が治ったようで。
龍平くんに向かって、右手の拳を突き出します。が、龍平くんは礼儀正しくお辞儀をするのでした。
たぶん、こんな風にグータッチがしたかったのに、空振りジュニア。
「私の下で働いてくれている、私の部下だ」と、自分の方が偉いんだよアピールを中学生にする察時さん。
小さくチッと舌打ちするジュニア。こらこら、ふたりとも中学生の間で喧嘩しない喧嘩しない。
「あとで話でもするといい」「はい!」
一方、時乃は外の時計台を見ながら「綺麗な時計台〜」と喜んでいます。まぁ、そこが殺人現場なんですが……時間は、12:25ぐらいのようです。
察時の部屋
察時さん、ジュニアそして時乃は察時の部屋へと集合。時乃が急須でお茶を入れています。ふむふむ、これは時乃が察時さんから事件のことを聞くときのルーチンですものね。
「それで?これは一体どういうことなんですか?」と聞くジュニア。
「今朝、あそこの時計台で黒岩という宿泊者の遺体が発見された。第一発見者は……私だ」
第1話に続き、今回も第一発見者の察時さん。
驚くジュニアと時乃。
「まぁ、たまたま私もこのペンションに泊まっていたんだ。遺体の状況から殺人であることは間違いない。地元の警察は、ここの関係者を疑っている。全員外出禁止だ」
「え?じゃあ察時さんも疑われてるということですか?」「そういうことだ」
「はは……で、なんで時乃呼び出したんですか?」
「あ…それはぁ一泊の予定だったから、なぁ、着替えを持ってきてくれと頼んだ」
うんうん、と頷いて話を合わせる時乃。
「そういうことか…」納得したらしいジュニア。
「じゃ、もう用は済んだな。行こうぜ時乃。休日まで管理官の顔なんて見たくないよぉ」
「えっ…でも」アリバイ崩しどころか、話も聞いてないので焦る時乃。
「待ってくれ!」察時さんがジュニアに声を掛けます。
「なんですかぁ」上司に冷たい態度を取るジュニア。
「手を貸してくれないか」「なんで俺が?」「いやぁ、ま、君にと言うか」と右肩眉をあげつつ時乃を見つめる察時さん。
「捜査なら地元の奴らに任せとけばいいでしょう」
「このままだと龍平くんが疑われる。どうにか助けてやりたいんだ」
「龍平?あぁ、あいつか。管理官、そんな熱いキャラでしたっけ?」
「龍平くんの将来の夢は警察官だ。夢を壊したくない」
「ゆーまさん!話、聞いてみませんか?」入れたお茶を持ってジュニアに話しかける時乃。
彼女に微笑むと、察時さんに向かってキメ顔で「詳しい話を」。
「この事件の関係者は私を含めた宿泊者5人、そしてオーナー夫妻。合計7人だ」
事件前日16時ごろ
殺人事件が起きる前日の16時ごろ。
「到着してすぐ紅茶とケーキをいただいたときに全員と顔を合わせた」
いいですねぇ、おやつ付きのペンション!
「みなさん、せっかくですので簡単に自己紹介でもしません?」と言い出した一人の女性。
「いいですね」と応える男性。
「じゃ、言い出した私から」そう言って立ち上がると「上寺千恵です。会社員です。ここのお料理がとっても美味しいと評判を聞いてやってきました。夕食、楽しみにしています」
「ありがとうございます」と答えたのはオーナーの妻。「ぜひ楽しんでいってください」とオーナー。
次に立ち上がった男性は「野本和彦です。僕も会社員です」
「察時美幸(さじよしゆき)です。公務員です」なるほど、警察とは名乗らないのですね。
「原口龍平といいます。中学1年です」と聞いて「え?中学生?!1人で来たの?ご両親は??」と矢継ぎ早に聞く上寺千恵さん。
「父も母も仕事で海外にいて、僕は全寮制の中学校に通っています」
「どうしてうちのペンションに?」と聞いたのはペンションのオーナー。
「祖母が、このペンション大好きだったんです。いつか、僕を連れていきたいって言っていたんですけど……去年亡くなってしまい、それで…」
「原口って…もしかして原口タカコさん?」すごいなオーナーの奥様、瞬時にお客様のことを思い出す。
「はい」
「おばあ様はご病気で?」とオーナーの奥様が聞くと「……はい」。ためらいがちに応える龍平くんをじっと見つめる察時さん。
察時さん、無意識なのか意識的なのかお客さんもオーナーも全員が見える位置に座ってますね。
「じゃ、最後の方」と上寺さんに促され、窓際で皆んなと少し距離を置くように座っていた男性が立ち上がることなく「黒岩賢一です。私も会社員です」と。あまり友好的ではない態度に静まる宿泊者たち。
「あの、どうしても気になることがあるんですけど…」と口ごもる時乃。
「なんだ?」「いや…聞かない方がいいかもしれないんですが」「なーにが手がかりになるか分からない。なんでも聞いてくれ」
「あ…..察時さんの奥さんと娘さんは?」
「あっ」と口元に手をやるジュニア。
「……ドタキャンされたんだよ。あのぉ、なんとかブラザーズとかいうグループのライブに急に行けることになったって」
「娘さん、おいくつなんですか?」笑いを噛み殺しながら聞くジュニア。こら、人が悪いぞ。
「13歳。中1だ」
「龍平くんと同い年ですね」と時乃が言えば「あぁ、父親のことがいっっっちばん嫌いになる時期だぁ」と満面の笑みを浮かべるジュニア。
「ちがう、ちがーう!今でも仲良しだ!…たぶん」
「すみません、なんだか変なこと聞いて」こらこら、時乃さんまでその言い方。
吹き出すジュニア。ジュニアを睨む察時さん。お茶を飲む時乃。
事件前日19時ごろ
「その後、それぞれ時間を過ごし夜7時から夕食になった」
夕食の時、皆さんの座る位置がケーキを食べた時と少し変わっていて。黒岩と龍平くん&野本ペアは同じ位置。察時さんが座っていたテーブルに上寺さん。察時さんは入口近くのテーブルに座り、これまたお客さん全員が見える位置に座りました。
「被害者の黒岩さんも一人で美味しそうに食べていたよ。ただ感心できない癖があったから」
黒岩さん、美味しい料理にテンションが上ったのかフォークとナイフを擦り合わせ金属音を立てていました。チャンバラみたいな感じで。
野本さんが「龍平くんは、将来の夢は何かあるのかい?」と聞くと「警察官になろうと思っています」と。
それを聞いた黒岩さん、ちらっと龍平くんを振り返ります。
「ほぉ〜、警察官ね、それは頼もしいなぁ」と笑う野本さん。まぁ、笑うとこではないけれど。
「夕食の後、私は龍平くんに声をかけて警察官だと伝え部屋に来ないかと誘った」
「娘さんに相手にされなくて、よっぽど寂しかったんでしょうね」
「そうですねぇ……」こらこら、時乃さん、その相づちは。
ズルズルっと音を立ててお茶をすする察時さん。
「そこで、どうやったら警察官になれるかといったことや、警察学校での訓練、その後の勤務について話し合った。目を輝かせて聞いていたよ」
良かったですねぇ察時さん。娘さん、そんな風に自分の話聞いてくれないんでしょうねぇ、たぶん。
「重要なのは、ここからだ」
**********昨夜の22:30ごろの回想シーン**********
「もう止んだかな」と言いながら立ち上がって窓の方へと歩く察時さん。
カーテンを開け「おー、綺麗な時計台だねぇ」と察時さんが言うと「あぁ、夜も綺麗だって祖母が言ってました」
「部屋の明かりが反射して(時計台が)見づらいな」そういって部屋の明かりを消す察時さん。
時計台の時計が23時を指しています。
「綺麗ですね」
「うん」優しく同意する察時さん。すっかり龍平くんを息子のように思っているようです。
「あれ、黒岩さんじゃないですか?」
龍平くんの視線の先には、ペンションからでて時計台へ向かう黒岩さんの姿が。
立ち止まって一度振り返ると、また時計台へ向かっていきます。
「本当だ」
「こんな夜中に、時計台に何をしにいくのでしょうか?」
「警察としては、盗みを連想するなぁ」
「今日の昼間、中を見学しましたけれど何もありませんでしたよ」
「気にすることもないか」「そうですね。じゃあ、僕はそろそろ」
「へっ。そうかぁ」名残惜しそうな察時さん。
「色々聞かせていただいて、ありがとうございました」律儀に頭を下げる龍平くん。
「私も楽しかったよ」そう言って片手を差し出す察時さん。しっかり握手。
「おやすみなさい」そういって龍平くんは部屋を出ていきました。夕飯が何時に終わったか分かりませんが、まぁゆうに2時間は喋っていたと思われ。聞きたかった話とはいえ、龍平くんも疲れちゃったよねぇ。
察時さんとしては、家族も、部下も、こんなに素直に話を聞いてくれないから嬉しくって喋っちゃったんでしょうねぇ、たぶん。
「その後、しばらく時計台を眺めて11時10分ごろにカーテンを閉めた」
「被害者の黒岩さんは?」と時乃が尋ねると「戻ってこなかった。他に庭を歩く者もいなかった」
ベッドの上に寝転びながら、携帯を見ている察時さん。
LINEで娘さんとやりとりしているようで、「なんとかブラザーズのライブ楽しかったか?」という察時さんの問いかけに「五代目ビクトリーブラザーズだよ。すごい楽しかった!もう最高!じゃ、またね」と。
察時さんの娘さんは”美咲”であることが判明。そして、彼女のアイコンはクマのような動物のイラストのようです。ネコ??
娘さんからのメッセージを閉じたのが2/15(土) 23:14。携帯電話の待ち受けに出ていました。
「寝付けそうにもなかったので私はダイニングのバーに向かうことにした」そういって、実際に3人は部屋の外へでます。
「部屋を出た時、野本さんに会った。私の部屋の向かいなんだ」
察時さんと野本さんの部屋は階段を挟んで真向かいだったようです。
「こんばんは」と、察時さんに手をパーにして挨拶する野本さん。
「いやぁ、これからバーにでも行ってみようかと思いまして」
「ふはは」「もしや、あなたも?「はい、珍しいお酒が揃ってたんでちょっと飲んでみようかな、と思って」と飲む真似までしてくれる野本さん。
「ほほほほ。それは期待できますね」と察時さん。
「野本さんとバーに行くとカウンターに上寺さん、オーナー夫妻がいた。その後、私たちはバーが閉まる夜中0時まで色々な話をして盛り上がった」とカウンターで説明する察時さん。
昨夜は上寺さんと野本さんに挟まれるように座っていた察時さん。白ワインを飲んでいたのでしょうか。ワイングラスをクルクル回しながら歓談しています。
「そして翌朝、黒岩さんが朝食に現れず部屋にもいなかったためオーナーの里見さんと時計台へ行ってみることにした」
この話を廊下から聞いている人影が。野本さんが察時さんの話を盗み聞きしています。
「昨夜、黒岩さんが時計台へ向かったのを思い出したんだ」
「外は一面、雪に覆われていて地面にくっきりと足跡が残っていた。一筋の足跡は裏口から時計台に向かう足跡で。残りの二筋は、それより少し大きい足跡で裏口と時計台を往復していた」
「大きい方の足跡、私が今履いている、この長靴のようです。裏口に置きっぱなしなんで誰かがこれを使ったんでしょう」
「小さい方の足跡は時計台から戻ってきていない。(動こうとする里見さんに)あぁ、足跡を踏まないようにして」
「どうしてですか?」
「…嫌な予感がします」
「そして私の予感は的中した。凶器はペンションにあった鉄アレイだ。誰でも持ち出せるところに置いてあったそうだ」
「警察に通報したあと、もう一度足跡を確認したんだが小さい方の足跡は被害者の黒岩さんの履いていた靴のものと一致した。犯人は自分の足跡を残さないために裏口に置かれた長靴を履いて裏口と時計台を往復したんだ。そして黒岩さんの足跡には長靴がところどころ踏んでいたことから、最初に黒岩さんが時計台に行き、その後犯人が時計台に向かったということだ」
「私は時計台に向かう黒岩さんを目撃したあと、11時10分まで窓の外を眺めていたが犯人を見ていない。つまり、犯人が時計台に向かったのは私が窓の外を見るのをやめた11時10分以降ということになる」
しきりと、立入禁止のテープが貼られた先の裏口を覗いている時乃。
「死亡推定時刻は何時ですか?」と時乃が尋ねると「夜11時から0時ごろ。地元の刑事が鑑識と話しているのをこっそり聞いた」
「……見えた」 !!でました、ジュニアの”見えた”!!
「分かったか?」と怪訝そうに聞く察時さん。3人で一旦、察時さんの部屋へ戻ります。
ジュニアの推理
「今の話からすると犯行が行われたされる午後11時10分から夜中の0時までアリバイがないのは龍平くんだけだ」
「そういうことだ。しかし私には彼がやったとはどうしても思えない」
「はい。あの眼は本気で俺に憧れてた」先ほどダイニングルームで合ったときの話をするジュニア。
「……龍平くんは、その時間部屋で寝ていたと言っている。アリバイを証明するのは不可能だ。このままだと龍平くんは県警に連行され、取り調べを受けることになる。その前に、どうにか他の関係者のアリバイを崩せないだろうか」ちらっと時乃をみる察時さん。
「はい、ご依頼」と言いかけた時乃にかぶせるように「任せろ!」とジュニアが大声をだします。
「アリバイは俺が崩してみせる!」
「それは心強い」と察時さん大人の対応。時乃も、うんうん頷いています。察時さんに頼られて、嬉しそうなジュニア。
ダイニングルーム
「夜の11時から夜中の0時まで?その時間は、ずーっとバーで飲んでましたけど」と上寺さん。「あの、同じような話はさっき話しましたよ。あそこの刑事さんに」
ダイニングルームの入口には、いつの間にか稲葉刑事の姿が。
「何をぉ、してるんですか?」
「俺達も捜査に協力しようと思って」というジュニアに「ここは我々の管轄です。他人のシマを荒らすような真似はやめていただきたい」
「今どき縄張り意識強すぎだろ。これだから田舎は」というジュニアに「よせ」と止める察時さん。
「察時さん、あなたも一応被疑者の一人です。勝手な行動は、控えていただきたい。昨日のことをもっと詳しくお聞きしたい。ちょっと時間よろしいでしょうか?」言葉は丁寧だけど、常に高圧的。
「分かりました」と言って、別の刑事に別室へ連れて行かれる察時さん。
「これ以上勝手な行動するなら捜査の妨害をしたとして上に報告させてもらう」そう言って去る稲葉刑事。
「どうしましょう」という時乃に「なんだか大変ですね警察の皆さんも」という上寺さん。
「お騒がせしました。ところで昨夜バーには何時から?」あれだけ稲葉刑事に釘を刺されたのに質問を再開するジュニア。さすが。
「いいんですか?!」と驚く時乃に、「大丈夫だ。俺に任せろ」ヒューヒュー、カッコいいー。
「夜の10時くらいから?飲んでましたよ」
「では、他の方の様子はどうでしたか?」と上寺さんに質問する時乃。「時乃?!」「1回こういうのやってみたかったんです」と可愛く言われて、「今日だけ、特別だぞ」と言う座っている椅子を半分空けて、座面を2回叩いたジュニア。え、え、横に時乃さん座らせようとしたの??
野本さんへの聞き込み
「閉まるまでは1度も出ていません」と答える野本さんに「バーに行かれる前と後は何をしていましたか?」と質問する時乃。
自分が質問しようとしていたことを時乃に言われても、にこにこ見守るジュニア。
「どちらも、自分の部屋にいました」と部屋のナンバープレートを指差す野本さん。
オーナー夫妻への聞き込み
夕飯の仕込みでしょうか、夫婦はキッチンにいます。
「バーが開く夜9時から閉まるまでずっとバーにいましたよ」人参の皮をむきながら答えるオーナー。
「そうですかぁ。時計台に鍵はかかっていなかったですか?」
「はい、特に大事なものは置いていませんので」
「窓はありますか?」
「ありません」
「なるほど〜。人を殺すには、うってつけですね」って笑顔で言っちゃう時乃。
思わず「おっ」と言ってしまうジュニア。顔を見合わせる夫妻。
ここで私、もしかして、これって、あれですかね、全員が犯人なんじゃ?!と密かに思ってました。
龍平くんへの聞き込み
「夜の11時から夜中の0時まで、君が寝ていたことを証明できるものなんてないよな」と優しく聞くジュニア。
「はい。ありません…」
「そうだよな」
「あの…もしかして僕が疑われているんですか?」
「いや、皆に聞いていることだよ」と言いながら、ベッドに腰掛ける龍平くんの横に座るジュニア。
「心配するな」龍平くんの肩に手を置きながら「犯人は俺が捕まえてやる。警察官になりたいんだって?」
机の上には、龍平くんとおばあちゃんが写った写真が置かれています。
「はい」
「待ってるぜ、警察で」と再び拳を龍平くんに向けるジュニア。
ただ黙って軽く頷くだけの龍平くんに、拳の行き場をなくすジュニア。またもグータッチ失敗。それでもめげずに「またな、後輩!」と言って部屋を去るジュニア。
「カッコいい」とつぶやく龍平くん。
ダイニングルーム
「証言は一致してるな。嘘はついてない」というジュニアに「アリバイは成立しています」という時乃。「そうだな」
「一応、現場も見ておきませんか?」「本物の刑事みたいだねぇ。でも、さすがに現場に時乃は入れないよ。あの刑事も黙っちゃいないし」「そうですよねぇ」
「こっから先は俺に任せろ。できるだけ捜査の情報集めてくるから」「はい」
「では美谷警部、報告をお待ち下さい」と言って敬礼するジュニア。「お願いします!」と時乃も敬礼。「はいっ」て嬉しそうに出掛けていくジュニア。
うん、時乃にすっかり使われている。
そして、カウンターバーの端っこに腰をぶつけてちょっとつまづくジュニア。ふふふ。
その二人の様子を、物陰からこっそり聞いていたのは上寺さん。
夜、察時さんの部屋
「できるだけ県警の話を聞いてきましたよ」というジュニア。
「どうやったんだ?彼らが漏らすとは思えないが」
「ええ。うちのオヤジの秘書に連絡して話をつけてもらいました。あ、うちのオヤジ警察に顔がきくんで」
さすがジュニア。自分の立場を全面有効活用。
「はっ、そういうことか」
「まずペンションの周辺には関係者以外、足跡はありませんでした」
「外部の犯行という可能性はなさそうだな」
「ええ、それと県警は関係者全員の足のサイズを測ったそうです。オーナーの妻・万希子が23センチ。上寺千恵と龍平が24センチ。野本和彦と被害者の黒岩が25センチ。そしてオーナーの里見と管理官が26センチ」
「(裏口に置いてあった)長靴は26センチだから誰でも履くことができる。犯人を絞り込む手がかりにはなりそうにないな」
「それともう1つ、面白いことが分かったんです。被害者の黒岩の名前は偽名で、ここに宿泊をする際に記載した住所もデタラメだったことが分かったんです」
「それに司法解剖の結果、整形手術で黒岩は顔を変えていたことが分かったんです」
「整形で顔を?」
「ええ、指紋を照合したところ黒岩が一年前に摘発を受けて壊滅した特殊詐欺グループのリーダーだった白田公司(しろたこうじ)だったことが分かったんです」
「白田は間一髪のところで逮捕を逃れ行方をくらましています」
「黒岩は逃亡犯だったのか」
「逃亡犯……」呟く時乃。
露天風呂
ジュニアと察時さんが2人並んで露天風呂につかっています。
「話を聞けば聞くほど他の関係者のアリバイは完璧ですね。でも龍平がやったとはどうしても思えないんですよ」
おや!なんか、察時さんに対して素直に話してるジュニア!
「初めてだな、君と意見が合うのは」
「明日捜査の進展がなかったら県警は龍平の取り調べを始めると思います」
「明日が勝負ということか」「はい。夢だった警察に疑われ問い詰められたら龍平は…」
「警察に失望するだろう」と言葉を引き受ける察時さん。
そして、隣の女性用露天風呂で2人の会話を聞いている時乃。
「もう少し長く窓の外を見ていれば時計台に向かう犯人を目撃できたはずなんだ。バーになんて行かなければ」
頭に乗せたタオルを乗せ直しつつ「後悔しても意味ないっすよ。その代わり、今日は徹夜で会議ですよ」
「望むところだ」
「なんだか2人、いいコンビですね」と声を掛ける時乃。
「時乃くんか?」「ときの〜ぉ?!いたの?」そわそわするジュニア。
「はい。いいお湯ですね」「そ、そうだな」「ここのお湯は肩こり、腰痛、リュウマチ、それに美肌にもいいそうですよ」と時乃が言うのを聞いて、察時さん自分の腕にお湯を。美肌、気になるようですね?!
「じゃあ、私は先に失礼します。おやすみなさい」
「なんだぁ、鼻息荒くして。顔が赤いぞ、のぼせたんじゃないか?」とジュニアにいう察時さん。察時さん、察時さん、そうなんですよジュニアは時乃にのぼせてんですよ。
察時さんの部屋
パジャマに着替えたジュニアがペンション時計荘の見取り図を見ています。
どうやら、時計荘は1階に3室、2階に16室の客室があるようですね。
「何か見落としはないか〜?」枕を抱きしめながら呟くジュニア。
「管理官、もう1度ここに来てからの様子」ぐぅわっ(察時さん、いびきかいて寝てます)
「寝てんのかよっ!」と抱きしめていた枕を察時さんへ投げつけるジュニア。起きない察時さん。
翌朝7:42ごろ
泊まっている部屋のカーテンを開け、時計台を見る時乃。
「綺麗」とつぶやいたあとに、事件現場の時計台へ続く足跡を見つめます。そして、事件の話を色々と思い出し……部屋を飛び出します。
向かった先は、察時さんたちの部屋。激しくノックすると察時さんが「どうした?」と顔を出します。
「時を戻すことができました!犯人のアリバイは崩れました」と時乃が言うのを聞いて、そっとドアを閉め、時乃の両肩をがっちりと掴み「すぐに話しを」と促します。
が、ここでドアが開き「お、どうした時乃。こんな朝はやくから」と言いつつ、察時さんの手を時乃の肩から払いのけます。
そこへ、ベルの鳴る音が1階から聞こえてきます。
「里見さーん、いらっしゃいますか」稲葉刑事の声です。
「こんな朝早く、何しに来た」と言って1階をのぞきこむジュニア。いやいや、もう8時前だから、そんなに朝早いとは言えないのでは…。
「おはようございます、どうかされましたか?」と稲葉刑事へ聞くオーナー。
「原口龍平、呼んでもらえます?」「はい、お待ち下さい。おい、呼んできてくれ」と妻に頼むオーナー。
階段から1階の様子を伺っていた3人。察時さんが「まずいぞ、連行する気だ」。
「今日一日猶予があると思ったのに。チッ。くっそー」と言いつつ1階へ降りていくジュニア。
ジュニアがいなくなったので「時間がない。今すぐ話しを」と時乃に言う察時さん。「はい!」
ダイニングルームで謎解き
「龍平に何の用だ!」激しい寝癖のままジュニアは稲葉刑事につっかかります。
稲葉刑事は何を言わず、連れてこられた龍平くんに「詳しく話を聞きたい。署まで来て欲しい」「え?」「すぐに準備しろ。心配ない。ご両親にも、すぐに来てもらうから」
いやいや、でも海外にいらっしゃるのに。そんなにすぐ来られないよね?!
騒ぎに気づいた上寺さんと野本さんも1階に降りてきます。
「他の皆さんは帰ってもらって結構です」
「警察は龍平くんを疑っているんですか?!」と驚くオーナーの奥様。
「アリバイがないのは原口龍平だけなんですよ」
「だからって連行するのは急ぎすぎでしょ。そもそも動機がない」と反論するジュニア。
「それが……あったんです。黒岩は特殊詐欺グループのリーダーでした」
「それが何の関係があるんだ」
「その特殊詐欺グループの被害者の一人に原口龍平の祖母・原口タカコさんがいたんです。彼女は去年、架空請求詐欺で3000万円を失い…自殺している」
「原口龍平は、たまたまこのペンションで黒岩と出会い復讐を企てた」
なるほどー。稲葉刑事の低い声で妙に説得力ありそうに聞こえたけど。
いやいやいや。だって、黒岩は整形してたんですよね?!それ、龍平くん知らないですよね??
「龍平の夢は警察官になることなんだ。それは、おばあちゃんのことがあったから。そうだろ龍平?そんな少年が、どんな理由があろうと人を殺すなんて考えられない。あんたら、そう思わないのか?」
「行こう」と声をかける稲葉刑事。
「俺の推理を聞いてくれないか」
「推理?」少々小馬鹿にした感じの稲葉刑事。
「黒岩は時計台で殺された訳ではない。犯人は死体を移動させたんだ。犯人は先に黒岩を殺害し、深夜になって死体を時計台に運んだ。この方法ならバーにいた関係者全員が実行可能だ」
顔を見合わせる上寺さんと野本さん。
「(ため息をつきつつ)察時さんの証言があるだろぉ。11時に黒岩は時計台に向かっている」
「それは………時計台に住む幽霊の仕業だ!彼は幽霊を黒岩だと勘違いしたんだ」
上司が幽霊を見たことにしちゃってるジュニア。
「では、時計台に向かっている足跡はどう説明するのかな?」「あ……」「幽霊に足はないんじゃないかなぁ」と半笑いされるジュニア。
「探偵ごっこは、よそでやってくれ。お坊ちゃん」
おっと。稲葉刑事も、ジュニアの素性を知ったようですね。でも忖度しないところが素晴らしい。
そこへ階段から駆け下りてくる察時さん。「待ってください!」
「今度はなんだ!!」声を荒げる稲葉刑事。
「龍平くんにはアリバイがありました!犯人ではありません」
その言葉に、びっくりする龍平くん。だよね、自分のアリバイを自分でも立証できないのに。
「事件の解決の鍵は私が見たものの中にありました」と、時乃に説明されたことをさも自分の推理のように話し始める察時さん。
時乃曰く「私の部屋から足跡が見えたのですが殺された黒岩さんのサイズ25センチの足跡は、まっすぐ止まることなく一直線に時計台に続いていました」
「それは分かっている、それがどうかしたか?」と察時さん。
「おかしくないですか?」
「私が黒岩が時計台に向かったのを目撃したとき、彼は一度立ち止まってじっとペンションの方をうかがっていました。しかし、足跡には止まった足跡がなかった」
「その代わり、長靴(の足跡)には止まった箇所がありました。考えられることは1つ。もともと黒岩さんが履いていたのはサイズ25の靴ではなく長靴だった、ということです。というわけで、サイズ25の靴をはいていたのが犯人だったということになります」
ほへ?
「ペンションから時計台へ向かう長靴のあとがサイズ25の足跡を踏んでいる箇所がありましたので、長靴をはいた黒岩さんが時計台へ向かったのは犯人の後だったというになります」と説明する時乃。
「つまり黒岩が時計台に向かった時、そこにはすでに犯人がいた事になる。私が外を見始めたのは夜の11時ごろからですから。犯人は、その前に時計台に行ったんでしょう」
「黒岩は、なぜ自分の靴ではなく長靴をはいていたんでしょう?」と察時さんに質問する稲葉刑事。
「自分の靴のあとを残したくなかったからです」
時乃曰く「黒岩さんは犯人を殺そうと考えていたのではないでしょうか」
「殺そうとしていた?!……そうか!黒岩が時計台に向かう途中、一度ペンションを見たのは誰かに見られていないか不安だったから!こっちは(部屋の)明かりを消していたから、彼は見られたことに気づかなかったんだ」
「黒岩は口実を設けて午後11時ごろに時計台に来るように犯人に伝えました。しかし、地面に雪が積もっていたため自分の靴で時計台へ行くと足跡が残ってしまう。そこで黒岩は裏口の長靴をこっそり拝借して(凶器となるダンベルを持って)時計台へ向かった。時計台に着くと犯人は先に待っていた」
「そこで黒岩さんにとって計画外のことが起こりました。犯人に抵抗されたのです。そしてもみ合いになり、逆に殺されてしまった」
「やがて犯人は我に返り時計台を出ようとした。そのとき、犯人は気づきました」
「このまま自分の靴を履いて立ち去ったら足跡から自分が犯人だと分かってしまう。そこで犯人は、黒岩さんと靴を交換することにしたのです。もちろん、指紋は拭いて消しておいたことでしょう」
「こうして犯人は、自分の足跡を隠すことに成功しました。行きの足跡は黒岩のものだと思われるし、帰りは長靴をはくことで本当の自分の靴の足跡をごまかせる」
「犯人にとって幸運だったのは時計台からペンションに戻ってきたのが11時10分よりあとだった、ということです。そのとき察時さんは窓の外を見ることをやめていたので目撃されずに済みました。以上の推理から龍平くんの無実は証明できます」
「犯人は、黒岩さんより前に時計台へ向かっています。なので、黒岩さんが時計台へ向かうところを察時さんと共に目撃した龍平くんは犯人ではありえません!」
ぱん!と1つ手を打って「完璧だ!」と叫ぶ察時さん。そのころ、1階ではジュニアが必死に幽霊話をしていたんでしょうねぇ。
「では、犯人は一体だれでしょうか?」
「犯人は黒岩さんより前に時計台に向かい、夜11時10分以降にペンションに戻りました」
「つまり、少なくとも11時前から11時10分の間アリバイがなく、黒岩と靴を交換できたことから」
「黒岩さんと靴のサイズが同じ25の人物です」
「野本さん…あなたですね?」
「野本さんは夕食を終えてから廊下で察時さんと出くわすまで自室にいたとおっしゃっていましたのでアリバイはなく、靴のサイズは偶然にも黒岩さんと同じ25です」
「私が廊下で出くわしたとき、彼は時計台から戻ってきたばかりだったのか!」
「あのとき察時さんは、自室から出ていくところだとお考えになりましたが実はそうではなかったのです。野本さんは黒岩さんの部屋に侵入して彼の靴を自分のものにしようとしていたのです。鍵は時計台を去る時に黒岩さんの衣服をさぐって取っておいたのでしょう。しかし察時さんと会ってしまい、考えをかえてバーに行くことにした。黒岩さんの部屋に侵入するのは深夜に変更したのでしょう」
「まぁ、皆さんも私も犯人と被害者の足跡を取り違えてしまったことが、犯人と被害者がきた順番を逆に考えてしまった。その結果、犯行時刻が実際よりも後だと誤認してしまい犯人にアリバイが成立してしまったんです」
「これは犯人が計画的に作ったアリバイではなく、偶然が重なって意図せず成立してしまったアリバイなのです」
「アリバイがあることに一番驚いたのは野本さん自身なのではないですか?」