小栗旬さん主演のドラマ『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係 』。
この第5話が個人的には一番好きです。1話完結なので、ここの回だけでも見ていただきたいぐらい。でも、主人公たちのやりとりも面白いので1話からも見ていただきたい。1話からの流れで、この5話。
自分が誰で、なぜ殺されたかも分からない途方に暮れまくる被害者を演じる宮藤官九郎さんが最高です。宮藤官九郎さんと絶妙な駆け引きを見せる小栗旬さんの演技も最高です。
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Contents
登場人物
役 名 | 俳優名 | 役 柄 |
石川 安吾 | 小栗 旬 | 警視庁捜査一課の刑事。ある事件の調査中に銃で撃たれ、脳内に弾丸が残っている。そのことがきっかけで、死者の姿が見え会話ができるようになる。 |
市倉 卓司 | 遠藤 憲一 | 石川と立花の上司。 |
立花 雄馬 | 青木 崇高 | 石川のことをライバル視している同僚。 |
比嘉 ミカ | 波瑠 | 警視庁刑事部 特別検視官。検視官のダサいジャンパーを着るぐらいなら辞める、と公言。検死だけでなく、現場の状況も見て推理もする異色な検視官。 |
赤井 | 古田 新太 | 市倉専属の情報屋。表向きはバーの経営者?サイモンとガーファンクルを石川に紹介する。 |
サイモン | 浜野 謙太 | ガーファンクルと一緒にハッカーをしている。 |
ガーファンクル | 野間口 徹 | サイモンと一緒にハッカーをしている。 |
スズキ | 滝藤賢一 | 裏社会の便利屋。 |
岡部 義剛 | 宮藤 官九郎 | 身元不明の死体。接点のない一軒家の敷地内で死んでいた。 |
小説とマンガ版もあるそうです
小説版も面白かったです!
第5話「追憶」のネタバレあらすじ
住宅街の一軒家。女子高生が学校へ行こうと家を出た瞬間、見知らぬ男性が庭で死んでいるのを発見する。
男性は自分がなぜ殺されたのか、なぜこの場所にいるかも、自分が誰なのかも思い出せず困り果てていた。そして現場に来た石川だけが自分のことを見えると知り、自分が誰か、そして死んだ理由が分かるまで付きまとうと宣言する。
検死結果からも、最近管内で起きているノックアウト強盗の仕業かと思われたが実際に強盗を逮捕してみると被害者の事件とは無関係だったことが判明。
そこへコンビニのゴミ箱から被害者男性の財布が発見される。そこへ捨てた男子高校生たちは酔っているサラリーマンから出来心で財布を盗んだこと、自分たちが見たときは確かに生きていたと証言する。
財布に入っていたものから家族へと連絡が行き、被害者男性・岡部の妻が遺体確認へとやってくる。彼女の姿を見て、自分に何が起こったか思い出した岡部。
名古屋へ3日間の出張だと嘘をついて家を出たこと。1年前の合併で自分に合わない部署へ異動され納得がいっていなかったこと、しかし転職するのも難しいし家族やローンのこともあって心が荒れていた。いっそのこと、風俗巡りをしたら気が晴れるのではないかと。
結局、妻の顔がチラついて風俗巡りはしなかったが何件もハシゴをして酒に酔っ払った帰り道……ここまで話して、石川に望みを叶えてくれたら話すと言い出す岡部。
事件を解決するために仕方なく望みを叶えることにした石川は、便利屋スズキにあるお願いをする。
事件の真相は、意外なことだった。酒に酔った岡部だったが気持ちがはれず、偶然みたポールを陸上のハードルに見立て飛び越えることで、自分もまだまだやれると自信をつけようとした。
しかし手前で躓いてしまいポールに胸を強打。あまりの痛みにようやく起き上がるも、今度はふらついて電信柱に頭を打ち付けてしまう。これが右側頭部の傷。必死になって起き上がり、自宅に似た門構えの家へと入っていき、そこで絶命。
岡部の願いで、ポールを飛び越えようとしたが失敗したことは妻には告げることはなかった。
岡部の荷物を持ち帰った妻は、スーツケースのなかから自分たち宛の手紙を読む。夫が自分たちを愛しているが、なかなか口にできないことが綴られており号泣する妻と子。そんな2人を泣きながら抱きしめる岡部。
この手紙は岡部の筆跡を真似てスズキが書いたものだった。
岡部の告別式当日。石川は岡部の最後の願いを叶えるため岡部の自宅へ。
そこで、岡部の娘が人生で初めて海をみた記念すべき日の映像を見る。希望が叶い心から御礼を言う岡部。それが石川がみた最後の岡部の姿だった。
成仏したことを喜びつつも、人懐っこい岡部との別れを噛みしめる石川。
第5話「追憶」の流れ
野本家
女子高生が慌てています。学校に遅刻しそうなのか、焼きたてのトーストを手に持って家を出た瞬間。悲鳴を上げました。
驚いた母親が玄関へ行くと、自宅の敷地内に男性が倒れていたのです。
「私は…誰なんだろう?私は、なぜ死んだんだ?」と不思議がる被害者の男性。
知らせを受けた市倉たちが現場へ。現場近くの電柱に寄りかかり、ひどく情けなさい顔で体育座りをしている男性。
市倉たちが反応しないところを見ると、彼が被害者で石川にしか見えてないようです。
ミカは臨場を終えたところらしく、現場から出ていこうとしています。
市倉が「ご苦労さん」と声をかけると「お疲れさまです」と返すミカ。「オッス」という石川には「オッス」、立花が「おう」と声をかけると「……」。
いいなぁ。
異常死には間違いないが、なんだか不思議な死体で詳しくは解剖しないと分からないというミカ。
「そうか。はいよ」と立入禁止のテープを持ち上げミカを通してあげる市倉。「ありがとうございます」とお礼を言うと、石川には「じゃああとで」と声を掛けるミカ。
立花がミカを覗き込むように「あとでな」と言うと「……」無言で去っていきました。
良いなぁ。好き。
チッて顔してる立花を置いて歩き出した市倉「だいぶ仲良くなってきたな」と。「そうっすね」と笑いながら返す石川。
いいなぁ。もう冒頭からいいなぁ。
別の刑事から、死体発見時の状況が説明されます。発見されたのは7時45分頃。この家の主人が昨夜23時ごろに帰宅したときにはなかったので、ここで殺されたか遺棄されたのではないか、と。
すでに被害者は石川たちの側へと移動してきていました。死体になった自分を悲しげに見つめています。
死亡推定時刻は午前0時〜3時。
身分を証明するものは何も携帯しておらず、現在身元不明。ポケットにはハンカチと小銭だけ。携帯電話もなし。
「取られたのか、初めから持ってなかったのか。どっちなんだろうな」という市倉に、かすかに首をかしげる被害者。
右側頭部の傷から出血したあとがあることから、最近管内で頻発しているノックアウト強盗の被害者かもしれない。そう聞いて、右の側頭部を押さえる被害者。
「結婚指輪をしてますね。奥さんから捜索願が出されているんじゃないですか?」という石川の言葉に、自分の左で薬指をじっと見つめる被害者。
「夫に無関心な嫁が3ヶ月も捜索願を出さなかった事件を担当したことあるよ」という市倉。「それに離婚していても未練たっぷりで指輪をはめたままの奴もいるからな」
そして、被害者に近づいて臭いを嗅ぐ市倉「これ、だいぶ飲んでるなぁ」
自分の息を確かめる被害者。
もう、面白すぎるんですけど宮藤官九郎さん。自分が誰なのか、なぜここで死んだのか、本当に途方に暮れていて、かつ、刑事たちの一言一言に反応しちゃうのが伝わるし、申し訳ないけれど面白い。
酔っ払ってふらふらになっていたところを狙われた可能性があるから、行きつけの飲み屋があれば身元は簡単に割れるだろうという市倉。
そして被害者と、一軒家に住む住人とは一切面識がないことも分かりました。強盗に襲われ、助けを求めるためにこの家へ入ったが頭の傷が元で死んでしまったのか?という立花。
とりあえずは解剖の結果を待とうと現場を離れていく刑事たち。
「一体何が起きたんでしょうね?」と石川に話しかける被害者。
「こっちが聞きたいんですけど。あなた誰なんですか?」と小声で返す石川。「まったく思い出せないんです」
石川は被害者のために立入禁止のテープを持ち上げて通してあげているようです。
それを遠くから見ていた市倉は「なにやってんだ、あいつ?」
立花は、これ以上ないぐらいの笑顔で「頭の中の弾のせいですよ。手術で現場を長く離れるのも、そう遠くはないですね」「性格悪いね、お前」
「すみませんでした」と合流する石川。笑顔で、ポンポンと石川の右腕を叩く立花。
その石川の横に、べったりとくっつくように歩く被害者。
「何かすごく大事なことを忘れているような気がするんです。お願いします、助けてください。こうなったら自分が誰か、なんで死んだか思い出すまであなたの側を離れませんからね」
困ったなぁ……って顔する石川。
検死
ミカに検死されている被害者男性。
「あんなにじーーっと見られたらさすがに恥ずかしいな」とか「あんな綺麗な人に触られてる。なんか興奮してきたっ」とか言っちゃう男性に「黙れ。大人しくしてろ」と小さな声で言う石川。
しかし、その声を立花は聞いていたようです。やれやれ、やっぱり変だな、という風に小さく顔を左右に振りました。
スパッと胸をナイフで切られ「エグいなぁ。ちょっと、しんどいんで見なくていいですか」と後ろを向いてしまう男性。「勝手にしろ」。
検死が終わったようです。「可愛そうな石川くん〜♪」と歌いながら部屋を出ていく立花。
死因は解離性大動脈瘤による急性心不全だとミカは石川に教えてくれました。
「簡単に言うと、心臓から血を送り出す大動脈が破裂して血流障害が起きたことで心臓が止まってしまったってわけ」
それが起きた原因は、胸に残った痣から推測すると丸い棒状のもので勢いよく突かれた衝撃が原因なんだとか。直径が約10センチということからバットの先っぽを想像すると分かりやすいかも、と。
思わず胸を押さえつつ、首をひねる男性。
右の側頭部に打撲痕があることからして、ノックアウト強盗に頭を突かれたあとに胸を突かれ、打ちどころが悪く死に至った可能性があるようです。
捜査会議
野本家の入口門扉から被害者の右手の指紋と掌紋が発見されたこと、形状からすると被害者自ら門を開けて敷地内に入ったことが報告されています。
「私のために、こんなに大勢の人が動いてくださってるんですね。早く記憶を取り戻して捜査に協力したいです」そういって1人頷く男性。じろり、と男性を見る石川。
夜の公園
ベンチに座り紙コップのコーヒーを飲む石川。どうやら軽くご飯を食べていたようです。
男性は側に立ち「あなたも死んだ人間にいつもいつも付きまとわれて大変ですよね」。
石川は思わず笑うと「いつもじゃないですけどね。あなたみたいなのは初めてです」「そうなんですか?」「死者がまったく現れない時もあります。理由は分からないけど」「こんなこと、誰にも相談できないですもんねぇ。辛い時もあるでしょう」「まあね。でも、だいぶ慣れてきました。それがいいことなのかどうか分からないけれど。っていうか、人の心配してる場合じゃないでしょう」
ここでカメラが切り替わって、普通の人から見た視点、つまりは被害者男性が見えず石川が独り言をいってるかのような視点になるの、絶妙ですね。
「何か思い出したことはないんですか?」「必死に思い出そうとしてるんですけどね」「誰か目の前に思い浮かぶ人は?結婚指輪をしていたんだし、奥さんや子供が居るのかもしれない」「誰も思い浮かばないんですよねぇ。本当に妻や子供が居るとしたら、私は相当薄情な人間です」しょんぼりする男性。
「そんなことないですよ。仕方のないことなんだから、気にしちゃダメですよ」「いい人ですねぇ。優しくて、ハンサムだし。それに比べて私なんか。役立たずの見すぼらしい中年男ですよ」「いじけてどうすんですか」「やっぱりあの美人の先生が言ってたみたいに、何かきっかけがないと無理なのかもなぁ。そうだ…妻の名前を聞いたら何もかも思い出せるかもしれない。なんか適当に女の人の名前言ってもらっていいですか?」
はて、ミカさん何かいいましたかね、きっかけとか。
笑いながら「いきなりそんなこと言われても」「いやいやお願いしますよ」「……じゅんこ、かなこ、かすみぃ、ゆきえ」「それってもしかして歴代の彼女の名前ですか。うひひ」
男性をにらみ「本気で思い出す気ないでしょ?」と怒る石川。「いやいやいや、ありますよ!ちょっと魔が差したんです、許してくださいよ」
そこへ石川の携帯に着信。
またノックアウト強盗がでたものの、犯行の途中で巡回している巡査に見つかり未遂で逃亡したんだとか。もしかしたら、同じ犯人かもしれない、と。
巡回
立花と石川、そして被害者男性の3人で夜を徹して巡回。
「朝って、こんなに綺麗だったっけ」と呟く男性。
すると身長165センチぐらい、黒のジャージにカーゴパンツの怪しげな男性を発見。当時はニット帽をかぶっていたようですが、いまはかぶっていません。どこかに捨てたか、ポケットに入っているのか。
自転車置き場から自転車をとり、乗ろうとしたところへ石川たち登場。怪しげな人物は石川たちへ自転車を投げつけると走って逃亡。
途中、愛矯正歯科の名前が見えました。
東京都港区浜松町1丁目付近でロケが行われたようですね。
途中、角から出てきたタクシーのボンネットを華麗に飛び越えていく石川と立花。
思わず「カッコいい〜」と声が出てしまう被害者男性。はい、私もそう思いました。
裏路地をチョロチョロ逃げ回る怪しげな男性。男性と石川が飛び越えていった木の柵を、立花が体ごとバーンとぶつかって壊して突破したの、本当に好き。そのキャラクターっぽくて。
児童公園に入るも柵を飛び越える男性。手もつかずに軽々飛び越える石川。本当にカッコいい〜。被害者男性にも見せてあげたかった!
そして裏路地から大通りへ飛び出した瞬間、大型トラックに引かれそうになった男性の首根っこをつかみ引き戻す石川。そして、ようやく取り押さえることができました。
ゼーゼーと息が上がってる石川に「ご苦労さまです」と声を掛ける被害者男性。「楽しやがって」と小声で言う石川。
取調室
被害者男性の写真を見せられ「知らないよ、こんな奴」と答える男性。「嘘をついているようには見せませんね」と石川にいう被害者男性。
シネコンの防犯カメラにうつっており、アリバイが証明されてしまいました。
「やっぱり。あの人は悪い人だけど嘘はついてないですよ」という被害者男性を軽く睨む石川。
ノックアウト強盗ではないのか、せめて被害者男性の身元が分かればとっかかりになるのに、という市倉に「すみません」と謝る被害者男性。
そこへ現場から2キロほど離れたコンビニのゴミ箱から被害者男性のもの思われる財布が発見されたと報告が入りました。
「本当にぃ?!」と大声をだす被害者男性。まぁ、聞こえるのは石川と私たちだけですけど。
財布の中には免許証や社員証が入っており確認中。ちなみに、被害者男性の名前は岡部義剛(おかべよしたけ)。開始14分にして、ようやく判明。
年齢は43歳。現金やクレジットカードは入っていなかったことから、やはりノックアウト強盗なのか?という市倉。そして石川たちにコンビニへ行ってくるよう指示をだしました。
自分の名前が岡部と分かっても、なにかピンと来てない感じの岡部。
コンビニ
防犯カメラ映像を見せてもらっています。映像は2014年5月7日かな?05/07/14と見えました。
男子高校生2名が自転車でやってくると、コンビニ入口付近にあるゴミ箱に何かを捨てました。
巻き戻してもらうと、まさに財布を捨てるところでした。
「ビンゴ!」と大声を出す立花と岡部。めっちゃ息ピッタリ。よく笑わないな。俳優さん、すごいな。
サムズアップして喜んでる岡部に若干呆れ顔の石川。気を取り直し、店員にこの2人をご存知ですか?と。近所にある高校の野球部員で、いつも22時とか23時ぐらいに来店する、と。
張り込みをしている立花と石川。
彼らがやってきたので、2日前の夜、このゴミ箱に財布を捨てたな?と聞きます。知りませんけど、と答える高校生Aに財布には指紋がついていたから嘘ついてもすぐに分かるぞ、という立花。
高校生Bが「捨てたとしたら、どうだっていうんですか」というと立花は「新聞ぐらい読めよ、ガキ」と。石川は財布の持ち主が亡くなったこと、常識から考えて誰が一番怪しいと思う?と。
自分たちに殺人容疑がかけられていると分かり「俺たちじゃないですよ」と答える高校生A。どっちでもいいから早く喋っちまえよ、長引かせていいことなんて、なんもねえぞ、と凄む立花。
学校帰りにサラリーマンみたいなおじさんが倒れていたから酔っ払いだと思い、つい出来心で財布を盗んだと告白します。
「バットで襲ったんじゃないのか?」という石川。「そんなことしてないですよ!僕たちが財布を抜いたときは絶対に生きてました、信じてください!」
「この子たちも嘘ついているようには見えませんねぇ」という岡部。
現場検証
再度、自分が死んだ場所にいる岡部。
あまりの元気の無さに「地縛霊みたいになってますよ」と声をかける石川。「冗談になってないと思うんですけど」完全にしょぼくれてます。
「すいません…やっぱり何も思い出しませんか?」「はい。本当に情けないです。一体私に何が起きたんでしょうか」「明日、奥さんが遺体確認に来ますよ。奥さんを見れば、記憶が戻るんじゃないですか」「戻らなかったらどうしましょうか」「…大丈夫ですよ。頑張りましょう」「頑張ってどうにかなる問題じゃないと思うんですけど」
チッ、と舌打ちして捜査へ戻る石川。「舌打ちされた…」と嘆く岡部。
面白すぎる。
警察
今か今かと奥さんを待っている岡部。石川の前を、うろうろ、うろうろ。
「緊張してるんですか?」「そりゃしますよぉ。いくら覚えてないとはいえ、自分の奥さんに会うんですから」「これをきっかけに記憶が戻るといいですね」「あーーー、ブスだったらどうしよう!!」
そこかよ!みたいな顔で岡部を見つめる石川。
すると前から1人の女性が歩いてきました。
「綺麗な方じゃないですか」とささやく石川。しかし岡部の表情は、戸惑っている?
「万が一ですが、見覚えのない方でしたらすぐにそう仰ってください」そういって、布をめくるミカ。
「主人です」そういって泣き崩れた奥さんを抱きとめる石川。岡部も抱きとめようとしたのですが、自分にはすでにそれが出来ないことが辛かったようです。
3日前の夜に岡部が亡くなったのに捜索届を出さなかったのは、3日前の朝に出張だと言って家を出たからだそうです。出張先は名古屋で、帰宅は今夜の予定だったのだ、という妻。
主人は本当に真面目で頑張り屋で、愚痴をこぼしたこともほとんどなかった。自分と娘を幸せにするために辛いことにも耐えて必死に働いてくれてただろうに、自分は主人の悩みに気づくこともできなかった、と後悔する妻。
もしおかしな事件に巻き込まれたなら、きっと自分のせいだ、とも。
7歳になる娘に、どう伝えたら良いのか、と途方に暮れる妻。娘さんは岡部のことが大好きだったから、と。
夜の会議室
「何か言いたいことはないですか?このままだと、どーでもいい人間関係を色々ほじくり返されて奥さんが嫌な思いしますよ?記憶…戻ってるんでしょ?」
そうなの?!
「なんとなくですけど、記憶戻ったの奥さんに再会したときでしょう。あのあたりから様子がおかしかったですから」
相変わらず無言。
「あの日あったことを話してくれませんか?あなたが犯罪に関わっていない限り、悪いようにはしませんから」
「付き合って欲しいところがあるんです」
東京ドームシティアトラクションズ
カップルや家族連ればかりのなか、1人スーツ姿で歩く石川。あからさまに振り返り、好奇の目で見るカップルの女性。
いや、むしろカッコいいから見てるのでは?(違う)
「そろそろここに来た理由を話してくれませんか。みんなの視線に耐えられなくなってきたんで」という石川。
「妻は会社の後輩でした。一目惚れでした。初めは全く相手にされなかったんですけど、しつこく何度も何度も思いを伝えて。どうにか付き合えることになったんです」
「奥さんの落ちた気持ち、分かるような気がします」と岡部に笑いかける石川、照れたように笑う岡部、1人で石川が笑っているように見えて不思議がる女性客。
ここは初めてデートした場所で奥さんが来たがっていたこと。せっかくの初デートだから平凡に食事するだけじゃ嫌だ、と。
「まぁ今みたいに何をわけするでもなく、ただこうやって歩いただけなんですけど。私には世界のすべてが輝いて見えました。閉園までたった30分だったんですけど、私には永遠に続く時間に思いました」
マジカルミストの近くにあるベンチに腰掛ける2人。
「会社が合併したのは1年前のことでした。私が元いた会社が吸収合併される形でした。すぐに合併人事があって、私は在庫管理の部署に回されました。ほぼ1日パソコンの前に座っているような仕事で、それまで外を飛び回って営業していた私には正直苦痛でした。会社での未来が完全に閉ざされたような気持ちになりました。妻や娘の生活、家のローンのことを考えると会社を辞めるという選択肢はあり得ませんでした。かといって転職が叶うような年でもないし。私に選ぶことが出来たのは、今いる場所に必死にしがみつく、という選択肢だけでした」
「奥さんに悩みを打ち明けようとは思わなかったんですか?」
「家では強い男でいたかったんです。頼りになる夫であり父親でいたかったんです」
「出張と嘘をついて会社を休んだのには、どんな理由があったんです?」
「私、これまで風俗に行ったことがなかったんです」「は?」「ふ、風俗です」「聞こえてますよ……何を言い出すのかと思ってビックリしたんですよ」
「気持ちが荒れてたんでしょうねぇ。風俗に行けば、ちょっとは気が晴れるかなぁと思ってどうせなら、とことん遊んでやろうと思って。3日間の休みを取りまして、こう風俗巡りをしようと思ってたんです」
情けない顔になり、がっくりする石川。
「呆れてる…」「呆れないわけ無いでしょ。がっかりです。さっきまでのよい話が台なしですよ」「やっぱりあなたには私の気持ちはわからないんだ。あなたはエリートで、かっこよくて、優しくて…」「いじけてごまかそうとしたってダメですよ」ビシ!
「で?風俗巡りは、したんですか?」「結局しませんでした」「本当でしょうねぇ。今さらカッコつけても意味ないですからね」「本当ですよ。信じてくださいよぉ。繁華街を歩き回ったんですけど。どうも妻の顔が思い浮かんで、どの店にも入れなかったんです」「一応信じます」
ぷぷ。一応ね。情けない顔になる岡部。
「風俗を諦めた後の話をしてください」と促す石川。
「自分の意気地のなさに落ち込んで酒を飲みました。何件かはしごしました。最後の店を出た後……」「何があったんです?」「話をする前に、1つお願いがあるんです」「なんですか?」「必ず願いを叶えてくれるって約束してくれますか?」「ものにもよりますよぉ。無理なことだってあるから」「じゃあ、話しません!」
「もしかして脅迫してます?」「そう受け取ってもらっても一向に構いません。事件を解決したいんだったら、私の願いを聞くことだ」と拗ねる岡部。
「分かりました、できる限り頑張ります」と渋々答える石川。「嘘をついたら祟りますからね」「…結構たちの悪い人だったんですねぇ」「……」
「で、お願いってなんですか?」
このシーン。セリフのやりとりも面白いんですけど、セリフのタイミング、声の調子など演技が面白すぎて。ついつい何度も見ちゃいます。
繁華街
「もっと大きなホテルとか駅のコインロッカーから当たったほうが効率が良くないか?」という立花。
「いかにもこういうところに泊まりそうな気がするんだよ」と答える石川。「奥さんから聞いた人物像によると、だろ」という立花。石川も答えは分かってるのに、それにこじつける理由を考えなきゃいけないから大変だなぁ。
「これこれ、このホテルです」と自分が宿泊したホテルに案内する岡部。
すしやの馬太郎さんが見えますね。宿泊したホテルは、今は改装されてしまったのかな?ホテルなのは変わらないようですが、ずいぶん綺麗になってる。
「死体の発見現場から歩いて15分か。繁華街の方からここに戻ってこようとする途中で事件に巻き込まれたんだとすると、まあ、分かりやすくなるな」
立花が喋っている間、一生懸命に自動ドアを開けようとするも反応しないのでがっかりする岡部。
ホテルマンが、問い合わせのあった荷物はこれだと出してくれました。宿泊予定は2泊だった、とも。
”5月8日(木)713(715?)”忘れ物と書かれた茶封筒の中には携帯電話が入っていました。携帯電話の電池が切れていたので、充電器を貸して欲しいとホテルマンに頼む立花。スーツケースをチェックしていた石川は、立花の視線がそれたのでササッと手帳をスーツケースのポケットから抜き取り自分のズボンへ。
「なにか見つかったか?」と振り向く立花。「いや、目立つものは入っていないな」
「ふぅー!スリル満点でしたね!」と満面の笑みを浮かべサムズアップする岡部。軽く睨む石川。
DELIX CAFE
「コーヒー飲みたいわぁ。死ぬ前に美味しいコーヒー飲んどけばよかったなぁ」と愚痴る岡部の言葉を聞きながら、コーヒーを飲む石川。
そこへオレンジジュースを注文した男性が石川の横に座ります。
「どう見ても営業途中のサラリーマンだよなぁ」という石川に「今日のテーマは健康志向の強いサラリーマンです」と答えるスズキ。
「だからオレンジジュースなのか?」「はい」とジュースを飲むスズキ。
先ほどスーツケースから取り出した手帳をスズキの方に滑らせ「ここに書かれた字を参考にしてくれ」「了解です」「書いて欲しいのはこれだ」とメモを渡され「こんな奇妙な依頼は初めてですよ」「それより絶対に代筆がばれないようにしてくれよ」「私の文書偽造歴を聞いたら、ビックリしますよ」「聞いたら捕まえたくなるから遠慮しとくよ」
一瞬だけ笑うスズキ。
石川は謝礼を渡すと「領収書きりますか?」「それも遠慮しとくよ」
スズキは一気にジュースを飲み干すと「ご依頼のものは半日もあれば出来上がりますので」と言って席を立つと「あ!これから1駅分歩くつもりなんですけど、もしよかったら一緒にいかがです?」
「……今度会うときは不健康キャラで来てくれ」。スズキは笑いながら「それじゃ、失礼します」と去っていきました。
「いかにもプロって感じの人ですね」という岡部。「ちなみに、いくら払ったんですか?」「……気にしなくていいですよ」「すみません」「これで、何が起こったか話してくれますよね」「はい。でも話聞いて怒らないでくださいね」
じーーーーっと岡部を見つめる石川。
事件現場
酔っ払ってホテルへ戻る道すがら、現場付近を通ったのだという岡部。
「浴びるほど飲んだのに、ちっとも気持ちは晴れませんでした。むしろ苛立ちが増したような気がして。そんなとき…これを見てしまったんです」
それは2本の鉄製のポールの間に、チェーンが渡してある進入禁止のポールでした。
左胸を押さえる岡部。
「もしかして……胸の傷は、これにぶつかって出来たんですか?」
「はい…」「でも…どうやってこれにぶつかったんですか?」
言いにくそうに「恥ずかしい話なんです」「今さら何を言ってるんですか。早く話してください」「絶対に妻や娘には話さないでくださいね。これを見た時……飛んでみたい、って思ったんです。私こう見えて学生時代は陸上部でハードルの選手だったんです。これを飛ぶことで、自分はまだまだ若いんだ!と。まだまだやれるんだ、ってことを証明したかったんです」
ポールをハードルに見立てたわけですね。
よし!と助走をつけて飛び越えようとした岡部。しかし越えられず、というか躓いてしまい、ポールに胸を打ち付けてしまったんだとか。
「本当に苦しくてしばらくの間、まったく動けませんでした。そして息苦しさが収まった頃、立ち上がって歩き始めたんですが…突然ひどい目まいに襲われました」
電柱に右側頭部をぶつけてしまう岡部。
「その先のことは、まったく覚えてないです」
電柱と岡部を交互に見つめた後「……失礼ですが、コメディー映画のような展開ですね」という石川に「せめて笑ってやってください。だけど、妻と娘には飛ぼうとして失敗したことだけは絶対に言わないでください!」「分かりました。そもそも証明のしようがないですから。あなたから聞いたって言うわけにもいかないし。酔っ払って足をもつれさせたということですべて解決すると思います」「良かったぁああ」
「電信柱に頭をぶつけたあなたは、気を失い倒れた。そして意識が戻ったときには記憶を失っていた。たぶん、あなたは自分に起きた事態を把握できないまま、ここから200メートルほど彷徨い歩いたあと大動脈が破裂して死んでしまった」
痛みに苦しみつつも、家の門を必死で開ける岡部。なんとか玄関まで行こうとするも事切れてしまう。
警視庁神宮前警察署
石川から夫が死んだ経緯などを説明される岡部の妻。
おかしな事件に巻き込まれたわけではないこと、出張だと嘘をついていたのも会社での苦境を気に病んでいたからだろう、と。
「言い方は適切ではないかもしれませんが、要するにズル休み、ですね」
「でも私、悔しいんです。あの人の悩みを聞いてあげたかった。あの人の最期は私が看取ってあげたかった」
「1つだけ確認したいことがあるんです」そういって、写真を取り出す石川。「もしかして、お宅の門構えと似ていませんか?」と岡部が死んでいた家の門の写真を妻に見せました。
「はい、似ています。門の形なんて、そっくりです」「これはご主人が発見された家の写真です。ご主人は、あなたと娘さんの待っている家に帰りたかったんだと思います。死ぬ間際にもあなたたちのことを忘れていなかった証拠だと思います」
泣きながら無言で頷く妻。
夫のスーツケースをひいて帰っていく妻。
「スーツケースのポケットに入っているアレ、気づいてくれますかね?」「気づかないわけないでしょ」
力強く言ってくれた石川の言葉に嬉しそうに「ですよね」と答える岡部。
岡部の自宅
「あやとみかへ。急に思い立って、仕事の合間にこれを書いています。父さんは口下手だから、いつも君たちに大切ななにかを伝えられてないような気がしています。でも、これだけは信じて欲しくてこうして書き残しておくことにしました」
無事、スーツケースのポケットから手紙を見つける妻。
「お父さんは君たちのことを愛しています。すごく愛しています。お父さんの平凡な人生の中で、君たちだけがキラキラと輝いています。例えば記憶を失ったとしても、その輝きを見るだけですぐに全てを思い出せるはずです。今から君たちを抱きしめるために帰ります。たぶん君たちを目の前にしたら照れてしまって、本当に抱きしめることは出来ないけれど。そんな気持ちで君たちのもとに帰ります。待っていてください」
母親が泣き出したので、母親を抱きしめて泣く娘。そんな2人を後ろから抱きしめる岡部。
夜の会議室
「いつになったら消えてくれるんですかねぇ」という石川に「そんな薄情なこと言わないでくださいよ。一緒に事件解決した仲じゃないですかぁ」「事件っていうか自爆でしょう」「もっと優しい言い方があると思うんですよねぇ。だって、こっちは死者ですよ」「明日お祓いに行こうかなぁ」「うわっ。そういうズルをするんだ」「ズルって」「分かりましたよ、じゃあこれからはなるべく出てこないようにします。その代わり、お願いがあるんですけど」
「またですか?!」「これが最後のお願いです。もう乗りかかった船じゃないですか」「…沈みかかった船な気がするんですけど」
思わず笑っちゃう岡部に、つられて笑ってしまう石川。
岡部の自宅
「その下に置いてあるはずです」
門の近くに置いてある植木鉢の下から家の鍵を取る石川。
「ただいま〜」と入っていく岡部のあとに「とうとう不法侵入かよ」とぼやきながら家に入る石川。
岡部は家族を撮影した「初めての海 2009年8月13日」という映像が見たかったようです。
いらすとやさんの”浮き輪で遊ぶ女の子のイラスト”が使われていました。
「あなたの告別式が終わって、奥さんと娘さんが戻ってくるまであと2時間ぐらいですからね。のんびり見てる時間はないですよ」「分かってますよ」
初めて海を娘さんが見たという日の映像。「記念すべき日ですね」「そうなんですよ」
怖がってなかなか海に近づいてくれなかったが、少しずつ海へ近づいていく娘さん。波が足に触れ、嬉しそうに振り向きました。
思わず嬉しそうな顔になる岡部と石川。
「この笑顔を見た時、初めて永遠という言葉が信じられる気がしたんです」「分かる気がします」「石川さん……ほんとうにありがとう」「なんですか、急に改まって。ちなみに、この海はどこなんですか?」
しかし岡部からの返事はありませんでした。
驚いて横を見る石川。すでに岡部の姿は消えていました。
「……(自分の腕時計に目を落とし)今ごろ…焼かれちゃってんのかな」
さっきまで岡部がいた場所を見ながら「もう少しだけ、見て帰りますね」。
画面を見ている石川の目から涙が一筋こぼれました。
簡単な感想
今まで色々と見てきた作品の中でも、この5話はいつまでも忘れられないです。
強制的に死者と交信ができるようになってしまい、犯人が確実に分かるようになってしまった石川。
そのため犯人逮捕のためならば手段を選ばない危うい道を歩きはじめ、どこか死との恐怖とも戦いながら、誰とも分かち合えない思いを抱えながら。
ただ、この岡部の事件はどこかホッとするような、岡部の遺族へ想いを届けることになり(というか、岡部がゴリゴリ頼んできたんだけれど)思わず泣いてしまう石川の姿が印象的でした。
まぁ、もう、本当に小栗旬さんと宮藤官九郎さんの掛け合いが素晴らしい。石川の呆れたような口調とか、岡部の拗ね方・照れ方とかもう最高でした。
また今後も何回も見てしまう気がします。
最後の「今ごろ…焼かれちゃってんのかな」が個人的には仄かな、ほんの僅かなおかしさでもあり、切ないですよね。でも石川のおかげで成仏できたんだから、良かった。うっ。
コミカルなんだけれど、じんわり温かい。本当に脚本も演習も演技も、丸ごとすべて好き。
それにしても、結構ロケも多くて大変な回だったでしょうねぇ。いや、このドラマ、全体的にロケ多めか!!